少し内容が、ややこしく&難しくなりますが
ここでは少し詳しく、人間の欲動の成り立ち
(仕組み)を書いておきたいと思います。
これはフロイドが欲動を研究した歴史(変遷)
でもあります。
まず、他の動物の本能には、
生存と生殖という2つの働きがありました。
生存とは、自分自身を生かそうとする本能
であり、
生殖とは、子孫を残そうとする本能
です。
人間の欲動で云えば、
生存→自己保存欲動(自我欲動)
生殖→性の欲動(性の衝動・・とも云う)
になるわけですが、本編でも書きましたとおり、
その両者は、似て非なるもの・・・
人間には思考や感情がある為に、姿カタチは
似ていても、違うものになってしまった
わけです。
そして、
それだけでは終わらず・・・(^^;)
性の欲動にも、
2つの種類があることが発見されます。
他の動物たちの本能(生殖)であれば、
性の対象はすべて他者、つまり相手のみですが、
人間の場合、自分を愛する(ナルチシズム)
部分もあるので、
自我リビドーと対象リビドー
を分けて考える必要が出てきました。
自我リビドーとは自己愛で、
他の動物の本能には無い部分です。
しかし、
この自我リビドーも、自分に向かう欲動
つまり、
自分を生かそうとする自己保存欲動
と同じ(同質)ではないか?
と云うことになり、統合されます。
※ただし、自我リビドーの持つ『自己愛』は、
ある意味で特殊なものなので、完全に統合
させず別々のものにしました。
そして、
自己保存欲動と、性の欲動は、目的は違っても
生きようとすることでは方向性が同じ
であることから、(この2つをまとめて)
生の欲動(エロス)
と呼ぶことになったわけです。
本当は・・・
ここで「めでたし、めでたし(*^^*)」
と終わりたいのですが実は、まだ続きが
あるのです。人間って、ホント複雑ですね。(^^;)
それは
フロイドが研究中に、第一次世界大戦が起こり、
そこで新たな症状の患者が現われ始めたのです。
戦争から戻り、幸せな生活を送るはずの兵士
たちが、戦場の夢を繰り返えし、それによって
恐怖的な不安を訴えるようになりました。
それまでのフロイドの学説からすれば、
人間の見る夢は、
『無意識にある願望を叶えるもの』
でなければならないのです。(^^;)
ところが兵士たちの見る夢は、願望を叶える
どころか、過去の戦争体験を追いかけ、
自分を苦しめる夢ばかりなのです。
欲動説からしても、人間の欲動(本能)は、
現実に従う現実原則か、
快楽を求める快楽原則のどちらか・・
つまり、
あくまでも現実に従うか、快楽を求めるか
であり、いずれにしても「生きること」
に根づいているはずなのです。
しかし、目の前の兵士たちの訴えは、
そのどちらにも当てはまらない・・・
過去に縛られ自分を苦める彼らの姿は、
フロイドにとって
まったくの「想定外」だったわけです。
これでは、
欲動説が成立しなくなる・・・( ̄~ ̄;)
そこで彼は、研究をしなおし、
欲動説に『死の欲動(タナトス)』
という新しい欲動を追加します。
つまり、
人間には「生き続けよう」とする生の欲動と
自分を無の状態に回帰させようとする願望の
死の欲動が(常に背中あわせの状態で)
心の中に存在しているというわけです。
(死の欲動=死の衝動・・とも云う)
※もともと、性の欲動(衝動)にも攻撃と破壊の
衝動が見られたものの、
性の欲動が接触の衝動であるのに対し、
攻撃本能は反発・破壊の衝動
という正反対な性質を持っていることが、
死の欲動を考えるうえで決定的なものになった
ようです。
つまり両者は、通常では一緒に行動(発動)する
が、ある要因・・・苦悩や、心の傷などに
よって、明確な対立関係となって現われる
わけで「別々のもの」と考える必要が出てきた
わけです。
少し説明が長くなってしまいましたが、
結局フロイドは、
生の欲動に対立する関係として、
破壊、攻撃的本能としての死の欲動を置き、
欲動説を完成させました。
死の欲動・・・なんとなく理解できるようで、
理解しにくい部分ですよね。(^-^;
しかし具体的に考えてみれば、人間には、
相手に対して攻撃的になったり、
自分を責めたり、苦しめたりする心があります。
また、生きる気力を失い食事を拒んだり、
自らの命を絶つ自殺などする心があります。
つまり、人間には、
生きようとするエネルギーがある反面、
死に向かおうとするエネルギーの存在も
存在する、と云うわけなのです。
長くなりましたが、
人間の欲動、いかがでしたか?
こうして見ただけでも、とても複雑なことが
お分かり頂けたと思います。
深く理解はできなくても、人間の心には
「そうした動きがある」ということを知って
頂ければ、きっと何かの役には立つと思います。(^^)
そして、これはオマケのオマケのオマケです。(^^;)
神分析学入門』をスマートフォン対応に再編集し
たものです。※文章はスマートフォン向けに編集
してある為、パソコン画面では読みづらい部分が
あるかもしれません。また画像を多用しておりま
すが、サイズがスマートフォン画面では見づらい
場合があるかもしれません。ご了承ください。