性格形成(3) 肛門期



さて、口唇期の次は、肛門期です。
時期的に口唇期と重なる部分が多く、相互に関係し
合っての性格形成となります。


人間にとって排泄(ウンチや、オシッコをすること)
は、摂取(食べること)に並んで大切なことですが、
産まれて間もない赤ちゃんにとっての排泄(ウンチや
オシッコをすること)は、それ以上に重要な意味を
含んでいると云えます。

それは彼らにとって、母親と自分を関係づけるもので
あり、同時に、そこからさまざまな人生訓(社会)を
学ぶからです。

口唇期全体でのキーワードは、受け取るでしたが、
この肛門期全体でのそれは、与えるです。

赤ちゃんにとってウンチは、初めて自分がつくる生産
物であり、お母さんがくれたオッパイへの、お礼なの
です。

つまり、(お乳を)受け取とるばかりではなく、
自分も母親にプレゼントするわけですね。

これで、(口唇期の)受け取るだけの一方通行では
なく、受け取る、与えるのキャッチボール(コミュニ
ケーション)ができるわけですが、ここに一つ大きな
意味があります。

それは、ただ一方的に「愛してる?」と訊ねるのでは
なく、相手が自分の行為をどう受けとめるのかを、
このキャッチボールで確かめるわけです。

つまり、「これをしたら相手は、どう感じるか」
と云った、ある意味での人間関係(の機微)を学び取る、
と考えて良いと思います。
 
ですので、この彼らからのプレゼント(ウンチ)を、
どのように受け取るか、が大切な意味を持ちます。

自分にとって気持ちを表すプレゼントでも、母親にと
って単なる「汚いもの」であったとすれば、心は通じ
合えず、彼らはガッカリしてしまいますからね。



肛門期も口唇期と同様、前期と後期に分かれています。

前期は、生後8ヵ月くらいから、1歳6ヵ月くらい
まで。オムツで排泄をすませる時期。

後期は、オムツは取れないけれど、そろそろ括約筋も
発達し、排便のコントロールがある程度できるように
なった頃から幼稚園の入園前くらいまでで、性格形成
の基礎づくりも、そろそろ終盤の時期です。

   
【肛門期・前期】

肛門前期が始まるのは「トイレができる2歳ころから」
という説もありますが、筆者としては、生後8ヵ月説
を支持しています。
正直なところを云えば、誕生直後からでも良いのでは、
と思う気持ちがあるくらいです。

その理由は、括約筋・・・
(かつやくきん。肛門を収縮させる筋肉)です。

括約筋が充分に発達していないと、当然のことながら、
本人の意思とは関係なく便が漏れてしまいます。
実は、この漏れてしまう(垂れ流す)と云うところが、
性格形成の重要な要素と考えるからです。

ウンチは赤ちゃんにとって『大切な生産物である』
と先ほど書きました。
その大切なものが、自分の意思に反して漏れてしまっ
たら、どうでしょう?

失ったショックが大きいのではないでしょうか。

赤ちゃんは、そうしたことに、とても無力感と、喪失
感を感じるのです。

ですから、もしそのときに
「あーあ、また汚しちゃったのね」
と云われてしまうと、その云い方や、その真意に
関係なく彼らは、失ったことのショックと、
自分の情けなさに、ますます自信を失ってしまい
ますし、排便という行為にも、あまり良いイメージを
持てなくなってしまうのです。

なので、賢く云うのであれば、
「あ、ウンチしたのね。ウンチすると気持ちいい
ものね。お母さんも嬉しいわ」
と喜んであげると、赤ちゃんも
「失敗したのではなくプレゼントは渡せたのだ」
と満足して、自分の行為を喜べるわけです。

つまり排便を喜んであげる、ということですね。
そうすれば彼らは、無用な無力感や喪失感を持つこと
なく、逆に自信が持てるようになるのです。


そして、ここで【肛門性格】という話をして
おきたいと思います。

なんとも面白いネーミングですね。(笑) 
でも、真面目な話です。(^.^)

フロイドは、倹約、頑固、几帳面がセットのように
性格傾向に現れることに着目し、それが肛門期に関わ
っていることを発見し肛門性格と名づけたました。

精神分析学では、ウンチはお金、と例えられていて、
倹約はケチケチと出し惜しみをすること、頑固は出す
ことをかたくなに拒むことに相当するので、そういう
性格の人は肛門期の排便に何かしらの問題があったの
だろう、ということが推測されるのです。

つまり、ケチケチした性格や、頑固な性格は、この頃
に形成されるわけですね。

逆に、惜しみなくお金を使える人や、おおらかな順応
性の持てる人も、この肛門期に関係すると云えそう
なのです。

その分かれ道は、やはり気持ちよく排便できたかどう
か、に尽きること思います。


では、几帳面は?と云いますと、これは、肛門後期で
中心となる躾け(しつけ)の問題だろう、とされてい
ます。

つまり、躾けをしなければ、赤ちゃんは「綺麗にしよ
う」とは思いませんから、やはり教えることによって、
几帳面さが身に付くわけです。

ただ、ほど良くあれば几帳面ですが、程度を過ぎれば
やはり潔癖症になって、のちのち窮屈なことになって
しまいます。

ただし、躾けと云っても、言葉でくどくど教えても、
彼らは叱られていると感じるだけの逆効果で、やはり
そこは、お母さんが身をもって行動で示してあげる、
ということが大切になると思います。

たとえば、ウンチやオシッコをすれば、お尻がムズム
ズして気持ちが悪い。
そのときに迅速に、オムツを替えてあげれば、彼らは
「綺麗になれば気持ちがいい」と覚えるわけです。

その気持ちがいいと感じることが大切で、そうすれば
自然と「綺麗にしよう」という気持ちも芽生えてきま
すよね。

※それは、これに限らず躾け全般に云えると思います。
「ああしなさい、こうしなさい」と云うよりも、
「これをしたら気持ちいい」「しなかったら気持ちが
悪い」と本人に『快・不快』を感じさせてあげること
で行動を促してあげるわけです。躾けは言葉で伝えよ
うとすると、どんなに優しい云い方でも、本人にとっ
ては、どうしても「支配されている」ようなネガティ
ブな印象となり、積極的に取り組む気持ちにはなれま
せんからね。(^^:


そして、この「気持ちがいい」が上手く行きますと、
彼ら自身の中に「気持ちよく排便がしたい」という
気持ちが残りますから、肛門後期にトイレトレーニン
グもスムーズにできるはずで、何よりの躾けになる
わけです。
   
反対に、いつまでも汚れっぱなしで放置されてしまい
ますと、赤ちゃんも「そんなもんだ」と思ってしまい、
汚れることに嫌悪感や抵抗感がなくなります。

のちのち片付け下手で、部屋がグチャグチャでも平気、
というのも、この時期の影響と考えても良いのではな
いかと思います。

もちろん放置されたことで「自分はその程度の存在」
といったような、あきらめのような気持ちにもなりま
すから、あまり性格形成上も、親子関係的にも良いこ
とではないですよね。


まだまだ書き残したことがあるが、たくさんあるので
すが・・・←この欲張りも肛門性格?(笑)
また別の機会にさせて頂きます。(^^;)


まとめますと、肛門前期の性格形成への影響は、
まず、喪失感、無力感から、自信が持ちづらく、無気
力な性格気質、が考えられます。
そして先ほどの頑固や倹約の肛門性格も、そうですね。

肛門前期までは、口唇期の前・後期と重なる時期でも
あり、お母さんと、赤ちゃんの、与える、受け取るの
キャッチボールが、やはり重要になると思います。   


【肛門期・後期】

2歳に近づいた頃が肛門後期の始まりです。
もう、かなり活発で、お母さんも大変な時期ですね。(^^;)

しかし、彼らの心の中も、さまざまな感情や葛藤で
一杯になっている頃ですから、妙に従順に従うと思え
ば、急に反発したり・・・も仕方ないですね。(^^;)

しかもこの後期は、トイレトレーニングが始まる時期
でもありますから、それをどう乗り越えるか・・が
重要になろうかと思います。


もちろん、この時期もポイントは与える(受け取る)
です。

ただし、肛門前期とは異なり、そのキャッチボールも
少し高度になります。
子供の気持ち(感情や葛藤、そして要求)も、成長し
高度になりますから、それを受け止め、投げ返してあ
げる親も、賢くなる必要があるわけです。

そして、ここでとくに気をつけなくてはいけないのは、
支配です。

うっかりしてしまうと、トイレトレーニングと称して、
結局は親の都合を押し付ける支配に繋がってしまうか
らです。

子供は、ようやく括約筋が発達して、排便を我慢した
りという、ある意味、自分の意思でコントロールでき
ることに快感を感じ、それを楽しみたい、と思ってい
ます。
  
おそらく産まれて初めて、自分でコントロールできる
ことですから、その喜びや期待は、想像以上でしょう。
そして、その能力の発揮が、誇り、自尊心にも繋がる、
重要なものです。

そこに親が介入して、ハンで押したように
「ウンチの時間だよ。さあ、しましょう」とか、
「これからお出かけするから、今のうちに」
などと云われたら、腹が立ちますよね。(^^;)
それこそ
「そんなの、オイラの勝手だろ(ーー;)」と。(苦笑)

もちろんそれは、
どんなに優しく呼びかけても同じです。
子供の意思とは関係なく、大人の都合(考え)を押し
付けるわけですから、どんな云い方をしても、彼らに
とっては支配なのです。


それでも子供は、ときに従順に、それに従うことが
あります。

しかしそれを鵜呑みにして
「この子は、素直でいい子だ」
なんて勘違いをしてしまうと、悲劇の元になります。

もともと、人の云いなりになりたい人間なんて、
この世には皆無ですからね。
しかも、自分の楽しみを奪われるわけですから、
その憤怒は想像して頂ければ。(^^;)

この時期の子供は、親に従うこと、つまり親が喜ぶ
ことがプレゼントと思っているふしと、親に見離され
ては、という恐れの気持ちが強いですから、自然と
「いい子」を演じることもある、と考えておいた
ほうが賢明です。

その裏側にある気持ちを理解しないで、
「いい子だから」と支配を続けてしまうと、子供は
抑圧することが多くなり、その結果、性格を歪めて
しまったり、後々に神経症を引き起こす原因にも
なってしまいます。

ですから、どちらかと云うと、
「出物、腫れ物だからね~」と、ノンキに構えている
お母さんのほうが、子育て上手かも知れませんね。


ちなみに、口唇期に口唇サディズム(口唇加虐性)が
あったよに、肛門期にも肛門サディズム(肛門加虐性)
というものがあります。

泣いたり、乳首を噛んだりするしかなかった口唇加虐
とは違い、今度はウンチや、オシッコという強力な
武器があります。
しかも産まれて間もない口唇期とは異なり、憎悪する
心が育ってますから、なおさらこの加虐性も強力です。

たとえば、トイレでウンチやオシッコをせずに、衣類
や室内を頻繁に汚す場合などは、
「何か不満が溜まっているのかな・・・」
と考えてあげてみてください。

子供にしてみても、衣類が汚れれば自分が気持ちの
悪い思い(肛門被虐性)をするのですが、そこまでして
でも、訴えたい何かがあるのかも知れませんね。


とにもかくにも肛門後期は、性格形成のまとめの時期、
でもありますから、油断して手を抜かないように、
でも、神経質になり過ぎないように・・・という
親にとっては、ちょっと難しい時期かもしれません。(^^;)

おまけに子供も、親に(融和して)甘えたい気持ちと、
「なんでそれがイケナイの?」という反発の、2つの
気持ち(葛藤)を強くする時期ですので、難しさも
ひとしおです。

彼らがぐずっても、その挑発に乗ってキーキー云わず
(汗笑)、「まあまあ、そう云わずに」と、おおらかに
接しながら、子供の心を理解してあげようとする気持
ちが大事かも知れません。(*^-^)


と、話が、あっちこっちへ飛んでしまいましたが、
まとめとして・・・

この肛門後期は、甘えたい気持ち(独占欲、嫉妬、
憎悪など)が、とても出てくる頃なので、性格傾向も
含めて『人間の幅』を決める時期かな、という感じが
します。

つまり、その欲求が上手く満たされていないと、他人
との協調が難しく、ある意味、自分勝手(ひとりよが
り)で、ひがみっぽい、性格になる、と云えるように
思います。

逆に、その欲求が上手く満たされていれば、他人に
も優しく、おおらかな性格にもなるわけです。

もちろん、だからと云って、彼らの欲求をすべて満た
してあげよう、なんて思わなくてもいいです。そもそ
も、そんなことはムリですしね。(^^:

むしろ彼らは、この時期に
「自分の欲求(要求)がすべて満たされるわけではない」
ことを学ぶわけですし、それも大事なことです。

ですので、彼らがイライラしていても、それにオロオ
ロするのではなく、むしろドーンと構えて、ニコニコ
と受け止めてあげたほうが、彼らも安心できると
思います。



最後に余談・・
排便にまつわる話として、2つほど。^^ゞ

その一つは、お尻の拭き方をちゃんと教えてあげる
ことがとても大事かなと思います。

すこし汚い言葉になりますが(^^:
よく「てめえのケツくらい、てめえで拭けよ」
なんて話がありますよね。

つまり自分の「したこと」の後始末ができない人は、
肛門前期での『汚れっぱなし』に関係していたり、
お尻の拭き方が綺麗に(上手く)できるか否かに
関係しているように思います。

つまり、そうしたことの「だらしなさ」が、成人した
あとになっても「自分のお尻も満足に拭けない」よう
な『だらしのない態度』と云う行動面に表れてしまう
わけです。


そして、排便にまつわる話の二つめは、
欲の深い人、憎しみの強い人は、便秘がちである、
と云う説があります。

そういう考え方で云えば、云いたい事も云えず心に
溜め込んでしまう人もそうかも知れません。

そしてそうした性格も、この肛門期と無関係ではない
ような気がします。

やはり適度に失ったり、適度に発散することを、覚え
させてあげることも大事、と云えそうですね。



以上が、性格形成に関わる口唇期と、肛門期です。
もちろん、さまざまな要素が絡み合っての性格形成で
すから、「こうだから、必ずこういう性格になる」と
云うものではありませんし、「この性格因子を持って
いるから、ダメ」と云うものでもありません。

性格にも必ず、良い面があれば悪い面もあり、それら
はすべて背中合わせなので、それをどの方向に発揮
するか、発揮できるか、が一番重要です。
つまり、良い悪いの問題より、活かし方ですね。

それにはやはり、日ごろから自分の性格を、しっかり
把握しておくこと、の自覚にあるように思います。



 

 

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