さて、無意識を中心に心のあれこれをみてきましたが、
第一部の最後は、防衛機制の話です。
もともと防衛機制は、幼く未熟な自我がエスの欲求に
応える為のものでした。
我慢を知らないエスは欲求が即座に満たされないと、
とても機嫌が悪くなります。(^^;)
なので自我は、なんとか欲求を満たそうと頑張ります。
しかし世の中、そんなに甘くはないですから、満たせ
る欲求だって「すぐに」は無理だし、どうしても叶え
られない欲求だってあります。
そこで自我は「とりあえず」の苦肉の策として、
エスにアメ玉を差し出します。
「ほら、キミが欲しがっているものだよ」
「とりあえず、これで我慢してね」
と、誤魔化しをするわけで、
つまり、それが防衛機制です。
とにかく自我がイチバン恐れるのは、エスというより、
欲求充足の失敗です。
自我の役割りは、エスの欲求を満足させることです
から、『失敗=任務が果たせなかった』ことになり
ますよね?
すると自我自身、無力感に包まれ、強い不安に駆られ
てしまうのです。
そうなると心全体が不安定になり、にっちもさっちも
いかなくなる・・・・
なので自我は、失敗が起こらないように。そしてもし
失敗して不安になってしまってもすぐに解消できる
ように、さまざまな防衛機制を駆使するわけです。
防衛機制は、決して特殊なものではなく、私たちの
日常の中でも頻繁に登場しています。いわば自我の
現実に適応する為のテクニックみたいなものですね。
では、その防衛機制には、どんなものがあるので
しょうか。その一部を簡単に見てみましょう。
※ちなみに、防衛機制は無自覚であり、自分自身、
防衛機制を使っていることは知りません。
【抑圧】
別の章でも頻繁に出てきましたが、防衛機制の筆頭は、
やはりこの抑圧だと思います。
強い不安や不快な出来事を、無意識の中に抑え込む
ことで、心の平常を保とうとします。
ただし、この抑圧を乱発してしまうと、あとあと心の
障害の要因となったりするのですが、もちろん無自覚
ですから、ある意味、どうすることもできません。
【否認】
実際に起こった事実を認めないようにすることです。
たとえば、大切な家族や友人を喪ったとき、その事実
を認めないことで、心の平常を保とうとします。
【同一化】
特定の人物の一部、あるいはすべてを自分の中に
取り込もうとする機制です。
受け入れられない現実があるとき、その相手と自分が
同じになることで納得しようとします。
たとえば、子どもが
「お母さん(実母)と結婚したい」と思う。
しかし現実的にはそれは叶わない。
そうしたときに恋敵である父親と自分が同じになる
こと(父親を自分の中に取り込むこと)で満足を
得ようとします。
※【摂取】何かを自分の中に取り込もうとするもの
で、この同一化と同じ種類と考えられます。
【投影】
実際は(その不安や欲求が)自分の中で起こっている
ことなのに、あたかも相手が「そうなのだ」と思い込む
ことで自分の気持ちを納得させようとする心の働きです。
たとえば、相手は自分を嫌っているわけではないのに、
嫌われていると思い込んでしまう。
しかし実際には自分のほうが相手を嫌っていたりする。
被害妄想などは、この投影が関係しています。
【反動形成】
欲望を抑圧してしまった為に、気持ちとは反対の
行動をとることです。
その目的は自分の本心を相手に悟らせない為ですが、
この機制の特徴が行動が過度(大袈裟)である為に
その多くは簡単にバレてしまいます。(^^:
分かりやすいのは子どもの行動ですね。
玩具店でジッとオモチャを見ていますが、
「それ、欲しいの?」と訊くと、「いらない!」と、
驚くほど強く否定したりします。もちろん大人でも、
そうした行動は多々ありますが。。。
あるいは、大嫌いな上司に対して
「やはり部長は凄いですね」などと、自分でも驚く
ほどにお世辞を云ってしまったりすることがあります
が、これらも反動形成の一つです。
【合理化】
自分の行動は正しいと理由をつけて正当化しようと
する心の働きです。
たとえば、「お酒だけが病気の原因ではない。病気に
なるのはストレスのせいである。だからそのストレス
を溜めない為に自分はお酒を飲むのだ」
と、受け入れられそうなもっともらしい理由をつけて、
その事実を正当化しようとします。そしてまた、そん
な自分の理屈で自分自身も納得させてしまいます。
【昇華】
現実には叶えることの難しいことや、社会的に受け入
れられないような欲望を、他のことで叶えようとする
こと。あるいは実際に叶えてしまうこと、です。
たとえば、どうしても許せない相手がいる。
しかし暴力は社会的に許されないことなので、
「自分は相手を越えて、もっとエライ人間になって
見返してやる」と、勉強や仕事、スポーツなどに
その力を注ぎ込もうとする心の働きです。
ある意味、もっとも理想的な防衛機制と云われてい
ます。しかし心に無理がありますから、それが過度に
なると、神経症や、うつなどの原因になってしまい
ます。
【退行】
本能的欲求を満たすことが難しいとき、心が過去に
後戻りして、その欲求を満たそうとする機制です。
一般に退行と云えば「赤ちゃん帰り」ですが、この
退行も、それと同じと考えて頂いて良いと思います。
その他、退行によって起こるものに、睡眠(夢)が
あります。
※退行は神経症や他の精神疾患に深く関係してます
ので、第三部の神経症で詳しく述べさせて頂きます。
【神経症】
これはちょっと毛色(成り立ち)が違いますが、自分
を守ろうとする心の働きという意味では、防衛機制の
一つと考えることができると思います。
詳しくは第三部で述べさせて頂きます。
その他、
出来事と自分の気持ちを切り離してしまう【分離】や
反対の行動をとることで、自分の感情を隠そうとする
【打ち消し】など、いろいろありますが、いずれも
不安や不快から自分を守り、心の平常を保とうとする
防衛機制です。
前述した通り、これらはすべて無意識的で、反射的で
すが、自分のしていることに途中や、後で気づくこと
もあります。
大切なのは、こうした機制による自分の行動や、相手
の行動を、「うそをついた」「誤魔化そうとしている」
と責めるのではなく、「何故、そうした行動をとった
のか」を考えてあげることだと思います。
つまり、人間の行動にはすべて意味があるわけですか
ら、このサインに気づいてあげることで、自分に対す
る理解を深めたり、心の病気を未然に防いだり、お互
いの理解を深め合うことも可能になるわけです。
関連リンク 防衛機制をもっと詳しく
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