性格形成(7)性格気質

さて、口唇期から性格形成がどのように行われるのか、を見てきましたが、その最終章として性格気質のタイプを書き出しておきたいと思います。





まず上の図をご覧ください。
分類の仕方も何種類かあるのですが、今回は私がいつも使っている分類方法でご紹介させて頂きます。

おおよそのことは、前章までに述べた通りで同じですが、分裂気質、パラノイア気質、躁鬱気質、と、なにやら病名みたいな名前が並んでおりますね。もちろんこれらは、病気とは無関係ではありませんが、ここでは性格気質のタイプ名と考えてください。

そして、『0歳から1歳、分裂気質』と(表に)刻んでありますように、その時期に強い固着があった場合に「こういう気質タイプが考えらる」という風に読んで頂けたらと思います。

尚、固着については、まだ詳しく述べておりませんが、発達段階のある箇所で(何かしらの理由で)欲求が残ってしまうことです。
欲求、つまり心的エネルギーであるリビドーが、ある箇所に留まることで、そこに強いこだわりが生まれ、その人の性格(行動特徴)の要因になるわけです。

※この固着やリビドーについては、第三部(神経症のページ)で詳しく述べさせて頂きます。



【分裂気質】
産まれてすぐから、生後6ヵ月くらいまでの口唇前期が分裂気質の対象で、この頃は完全なる受け身の時期です。
したがって性格気質も、してもらったこと、あるいは、両親のことなどの当時の環境などが、(性格に影響する)固着の要因になりうる、と考えて良いと思います。

さて、分裂気質で云う分裂は、心が分裂して何個かに分かれてしまう、と云うことではありません。

ここでいう分裂とは、自分と外界に壁をつくり、自分の世界に入ることです。

したがって、ここに見られる気質のキーワードとしては、内向的 と 自分の世界 になるかと思います。

気質的には、おとなしく、人との関わりをあまり得意としない傾向があります。
自分の世界を持ったような空想的、観念的であることも、この気質の特徴です。

しかし観念的ではあっても、自分の考え方や主張を、あまり前面に押し出すことは少なく、どちらかと云えば、自分の世界だけで、その信念を貫こうとする傾向があるかも知れません。

それは、前面に押し出さないのではなく、押し出すだけの力が無い、とも云えそうです。

また、自分自身のことになると動こうとしない、頓着のないタイプも、この分裂気質に多いのですが、頼られると「いや」と云えない性格もあって、他人の為となると意外と頑張る傾向があります。

黙々コツコツとやる努力家で、職人や研究者のような地道な作業が得意かも知れません。
そして産まれて間もない(無意識的な部分が多い)ということが関係していると思いますが、空想力にも富んでいるので、何かを創り出す職業にも適しているかも知れません。
 


【パラノイア気質】
生後6ヵ月から1歳6ヵ月くらいの口唇後期と肛門前期あたりが対象になります。
自分の力では、まだ満足にできることは無いけれど、行動力がつき始め、親にも「あれをしてくれ」、「これもしてくれ」と、自分の要求を示す時期ですね。

さて、パラノイアとは、聞き馴染みのあるような、無いような言葉だと思いますが、
偏執的、妄想的な性質タイプ、と考えてください。

と云われても、ちょっと想像が難しいかも知れませんね。

偏執(へんしゅう)とは、自分の考えに固執して、他人の言葉に耳を貸さないこと。
妄想とは、根拠もなく想像すること、真実でないことを真実と誤解すること、を云います。

あら、あら・・・(^^;)という感じですが、先ほども述べましたように、この時期は、行動力はあっても自力が伴わないのですが、「何でもできる」という万能感も強い頃なので、自分に対する高い評価を持っています。

したがって、妄想的であり、偏った考え方で耳を貸さない、というわけです。

それに付随して、自分が非力であるという自覚がないので、上手く行かないことは他人の責任にしてしまうような傾向があります。

またこの時期は、離乳での親への執着と反抗から、両極性を持つようになる、とも云われています。

そして、肛門の括約筋がまだ不十分でありながら、そのときの無理な躾けがありますと、強い反抗心、復讐心のようなものを持つ傾向になり、前出の両極性から、表向きは穏やかな従順でも、裏に秘めた想いは復讐心と云ったような二面性もみられます。

また、離乳での「親から引き離される」という執着の断念から、嫉妬深い傾向もみることができます。

と、あまり良い面がないみたいですが、気力の弱い分裂気質に比べ、とても強いエネルギーを持っていますから、それを上手に引き出すことができれば、反抗心や嫉妬心は「なにくそ!」の頑張りの素、粘りの素になります。



【躁鬱気質
1歳6ヵ月から2歳6ヵ月くらいの、肛門後期が対象になります。
三つのタイプの中で一番の年長だけに、とても現実的で、その処理能力も抜群なのがこの躁鬱気質です。

ちょうどトイレトレーニングや、さまざまな躾けが始まる頃であり、その躾けのやり方によっては、親に対する愛憎、つまり愛と憎しみという相反する気持ちを抱くようになります。

とても現実的なだけに、環境の中で一喜一憂。そうした気分の浮き沈みが躁と鬱のような波になってしまうのが、この気質の特徴です。

外向的で、支配的な部分も強く要領も良いので、政治家や社長などに、このタイプの人が多いかも知れません。
「オレがルールブックだ」ではありませんが、世の中の決まり事や、常識のようなものを作り出すのも、
おそらくこのタイプだろうと思います。

彼らの云いそうな「友だちは一人でも多いほうがいい」、「健康な人は外で活動するものだ」といったような、もっともらしい常識(?)などは、間違っても分裂気質からは生まれてこない発想です。(^^;)



以上、3タイプの特徴を簡単に述べてみましたが、前述しました通り、性格は
「こうすれば、こうなる」の単純なものではなく、たとえば固着が性格をつくり出して行くとは云っても、一つの固着がその人のすべての性格を形成するわけではありません。

 




気質タイプにしても、影響力の大きかった固着の場所が、その人の基本気質になりますが、100%その気質だけと云うことはなく、他の気質と混ざり合っての性格構成となります。

たとえば、分裂気質とパラノイア気質が7:3くらいの比率で、内向的な性格であるが、パラノイア気質の執念深さも多少みられる、のような感じですね。       

未生怨については、別の章で述べさせて頂きましたので、ここでは割愛させて頂きます。
ただ、未生怨での出来事も、この性格要素に加味されるべきだろうと思います。

また、男根期に神経症を書き添えたのは、神経症の発症原因のほとんどが男根期に由来する為で、参考までに印ました。神経症については第三部で詳しく述べさせて頂きます。



余談です。
第二部の最終章として、性格タイプをご紹介させて頂きましたが、自分の性格が「こうである」と云っても、すべてがいつもその通りである、というわけではありません。

ときに性格は、まったく反対の顔を見せることがあり、その裏の顔のほうが、より鮮明で、より大胆であったりして、周囲の人を驚かせることがあります。

いや、そうしたとき、いちばん驚くのは、当の本人かも知れませんが。(^^;)

どういう話かと云いますと、それがいちばん分かりやすいのが分裂気質ですので、その例で云いますと・・・ たとえば、役者さんです。

彼らが素顔でテレビのインタビューなどに答えている姿を見ますと「この人が、(あの大胆な演技をしている)あの人と同一人物なのか?」と驚くことは珍しくないですよね。

それくらいマイクに向かっている彼らは、照れくさそうで、とても無口な人が多いです。
それに「子供の頃は引っ込み思案で、それを直そうと劇団に入りました」というコメントも少なくありませんので、そうした話を総合してみると、やはりこの人も分裂気質なのかな、と思ったりします。

人前に出たりするのは、むしろ躁鬱気質の人あたりが適していそうですが、意外とふだんの豪語とは裏腹にシャイであったり、大舞台に弱い面があったりします。
三つのタイプの中で一番の年長で、頭の回転が速いぶん、頭でっかちになってしまう傾向があるからかも知れませんね。

もちろん、ふだんからおとなしめの分裂気質も、人並み以上に内気なシャイさんではあるのですが、クソ度胸とでも云うのでしょうか^^;、ふだんの反動も手伝っての思わぬ大胆さに、周囲を驚かせることがあります。

たとえば、学校のPTAなどで、急に壇上で何かを読み上げなくてはいけなくなったときなど、固く辞退しながらも、「もう、引くに引けない」状態に追い込まれると、意外なパワーが出たりします。

この例えは極端な話ですが、しかし、人間の能力にはそうした隠れた部分が多分にありますし、短所と思っていることが意外と伸びる能力であったりもします。

なので、「こういう性格なのだ」と枠にはめてしまうことは、大変にもったいないことであり、ある一面だけで決め付けてしまうことは、ある意味、危険のような気がします。

性格も含めて、人間はとても奥深い生き物ですからね。(^.^)

    
以上で第二部の性格形成について、を終わらせて頂きます。

 


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