神経質症の素質  神経症になりやすい人

突然 降って涌いたような忌まわしい症状ですが、
そこには素質的要素というものがあり、発症以前から
症状に近い辛さや、前兆があったと思います。

この章では、そんな神経質症の素質的要素について、
考えてみましょう。


神経質性格

このコーナーの『森田療法について』にも載せました
神経質性格が、神経質症の一番の要素になると思います。
今回は、この性格気質を中心に、他の素質要素を
掘り下げてみたいと思います。

さて、神経質性格。

一般にはあまり良い印象を持たれていませんね。悪い
面だけを考えてしまうと、自分自身でも落ち込んでし
まうほど「おいおい・・・ゞ(・・;)」な感じです
から、それも仕方ありません。 
では、具体的にはどんな性格なのでしょうか。
ちょっと並べてみましょう。

まず神経質は、物事に細かく敏感です。
だから神経質でない人より、余計に物事を重大に
受け止め、過敏なほどの反応をしてしまいます。

そして、頑固で融通が無い(柔軟性が乏しい)ですね。
なので決まったレールの上では比較的安定しています
が、少し道がはずれると応用がきかずに、脆い(弱い)
面を露呈してしまいます。

さらには、とても執拗(しつこい)です。いちど拘り
(こだわり)だすと、とことん深追いします。

あと、いちばん苦しいのは完全欲の強さでしょう。
何事にも、完全を求めてしまい自縛してしまうこと
も多々・・・

と、これくらいにしておきましょう。(^_^;) あっ、
これは別に あなたを落ち込ませようとしている訳で
はないのです。そのことは、誤解無き様。あとで、こ
の性格が素晴らしいものであることも、キチンと証明
しますので、お待ちください。(^.^)

と、このような性格気質ですので、前章で触れた不安
も持ちやすく、悪い云い方をすれば、神経質症の格好
な餌食な訳です。別な云い方をすれば、自分から神経
質症に飛び込んでいるような性格とも。

そして元々、このような性格気質を持っていますので、
発症以前からも様々な苦しさや、辛さがあったと思い
ます。

例えば、いま嘔吐恐怖や胃腸神経質症の人は、元来、
食べ物に敏感であったり、対人恐怖の人は、以前から
人間関係に違和感や、息苦しさを感じていたり・・・
があったはずです。

医学的には、神経質性格と、神経質症の細かな区別は
ないようです。ただ神経質症的な症状が強く社会生活
が困難である人を神経質症と呼んだり、様々な身体症
状(不定愁訴)を訴える人を自律神経失調症と診断し
たりしているようです。いずれにしても、内科的な検
査をして異常が認められないことが前提となりますが、
中には内科的疾患として発症する心身症などのケース
もあります。


ならば発症は神経質性格だけの問題なの?

答えから先に云えば、それは「NO」です。
神経質性格だけではありません。

似た性格傾向を持ち、一緒の家庭で育った兄弟でも
発症しない人も多々居ます。理由は様々に考えられ
ますが、その代表的なもは環境です。

しかし、これには少し「ん? (・_・")? 」と思われ
たかたも多いでしょう。

同じ親から遺伝子を受け継ぎ、同じ環境に育っていれ
ば、環境はすべて同じだろうと・・・。
なので僕はあえて似た性格傾向を持ち、一緒の家庭で
育ったとしました。

まず、一緒の家庭で育っても、それは同じ環境とは
云えません。

例えば、長男と次男では、それぞれ親や周囲の見方や
接し方が違います。
そうなると本人の考え方とともに行動も異なってきま
す。これも環境の一つです。

そうした環境背景が微妙でも異なってくる以上、たと
え同じ親の遺伝子を受けた一卵性双生児であったとし
ても、同じ環境とは云えない。意地悪な云い方をすれ
ば、自分と まったく同じ環境を経験をした人、まっ
たく同じ性格を持った人は、この世に皆無なのです。


そして、そうした環境背景の中で性格形成が始まりま
す。 性格傾向は遺伝的素地の上に、それぞれの環境
での出来事や、そのときの感じ方などがクロスされな
がら育まれ(はぐくまれ)て行きます。性格のことを
キャラクターや、パーソナリティーなどと云いますが、
キャラクターとは『刻み込む』という意味。言い換え
れば神経質な性格素質を、強めたり弱めたりするのは、
そうした環境の中での刻み込みとなる訳です。

性格素質は遺伝的とも云われますが、その多くの性格
形成は、むしろこの環境による刻み込みの影響が大き
と云えるでしょう。そして、その多くの伝達は初め
に出会う成人の親であり、密着した関係の家族です。

『子供は親を模倣(真似)して育つ』と云いますが、
まさに良い面も悪い面も、コピーして育ちます。

なので、親が神経質な生活を送っていれば、自然と
子も神経質な傾向を持ちやすくなります。※

そして、そうした生活の中で、大人にとっては些細な
言動や出来事が、後年の発症に関わる要因になること
も少なくありません。

また、発症は思春期から30代までがピークとされて
いましたが、近年では中年以降での発症も多くみられ
るようです。これは平均寿命が延びたことや、生活環
境の変化(進学などで社会へ出る時期が遅くなったこ
と)や、人々の考え方の変化(社会や親の子供に対する
考え方や接し方が変化したこと)などから『心が育ち
づらくなった』ことが起因していると云えそうです。

つまり、元々神経質症は思春期特有の障害ですが、
実年齢が上がっても心が未成熟な為に、神経質症に
なりやすい状態が続いてしまっているわけですね。


※子は親を模倣して育ちますが、親が神経質でも必ず
子が神経質になるとは限らず、反対に『大ざっぱ』な
性格になることも珍しくありません。それはおそらく、
その子その子の性格因子も含めた『感じ方』の違いな
のだと思います。
あるいは、親の神経質さをつくづく嫌だと感じ無意識
に『真逆な性格』を選んでいるかもしれません。

ともあれ『必ず』や『絶対』は、ここでも「ありえな
い」のです。


ならば発症は、神経質性格と環境だけなの?

これも答えから云えば勿論『NO』です。
神経質性格は、その人の全体性格のほんの一部です。

全体性格は様々な性格要素が集まったもので、その
全体バランスによって形成されています。

いくら神経質性格が強くても、他の性格要素とのバラ
ンスによっては、「かなり神経質かな・・・」と思え
る人でも、神経質症にならない場合も多々。つまり、
どうやら神経質症に「なる、ならない」「良くなる、
良くならない」のカギは、この全体性格のバランスが
握っているようなのです。

森田博士が『治療ではなく人間の再教育』としたのも、
そうした性格バランスの歪みの再構築(組み直し)
という意味であったと思います。


また、仮に『神経質症になりやすい環境』が存在し、
その人がその環境の中で生活していたとしても、
必ず発症するとは限りません。

もちろん、そうした(良くない)環境であれば、仮に
神経質症にはならなくても他の精神障害や内科的障害
を引き起こす可能性はあるかも知れません。

いずれにしても、発症は、単一の原因要素ではなく、
性格気質や環境を含めた『さまざまな要素』によって
引き起こされている、と考えたほうが良いと思います。


神経質症者の性格特徴 

神経質症の診断を受けた人に性格検査をして頂くと、
おおむね次のような傾向を示します。

冒頭にあげた神経質性格の他に、

依存型性格(⇔自立型)・・幼弱性、甘えの強い傾向

猜疑型性格(⇔純情型)・・・疑い深い傾向

劣等型性格(⇔優越型)・・・自分を過小評価して、
卑屈になっている状態。

逃避型性格(⇔攻撃型)・・・物事に対して消極的で、
逃避行動を選びやすい。

その他に、忍耐性、思考性などを欠いた状態を示し、
自己中心的で、不安定であることが分かります。

勿論、人間には、どこかに癖や欠点があり、完全無欠
な傾向を示せる人は皆無ですが、やはりバランスを
崩した状態は、神経質症に限らず、様々な弊害を生み
生活するうえでも、つらいであろうと思います。 

上に示した性格傾向は、それぞれが酸とアルカリの
ph値のような傾きで現われます。
勿論、各々が「どちらを示す方が良いか」ではなく、
全体のバランスが問題となります。


全体性格と神経質性格の関わり

さて全体性格のお話をしましたが、人間にはその中に、
それぞれの個性とも云うべき『元となる性格傾向』が
あります。つまり、その人の中で際立った性格ですね。

そして云うまでもなく、神経質症では、
やはり神経質性格が、その主役。
元となる性格傾向になります。

ここでは、
この性格傾向を仮にリーダーと呼ぶことにします。

そして、このリーダーは その名に恥じず、先導者と
して、他の性格傾向に様々な影響を与えます。

いわば、全体性格の牽引者ですね。

例えば、神経質の細かく敏感・執拗な部分が高じて、
あることに固執してしまうと、猜疑型の疑り深さも強
まって、物事に異常な慎重さを生んでしまったり・・

あるいは、神経質の頑固で融通の利かない部分が高じ
たところに、劣等型性格が巻き込まれて、耳を貸さな
い卑屈な状態に自分を追い込んでしまったり・・・

勿論、良い面、良い方向へ向かうことも あるのです
が、つまり僕らの場合、良きにつけ悪きにつけ、
神経質性格が他の性格気質に様々影響を与えている、
ということなのです。


ただし、あまり単純に
「神経質症の、やはり犯人は神経質性格でしょ?」
「だからとにかく、それを何とかしなければ・・・」
と、そこばかりに目を奪われていると、神経質症が
改善に向かえないどころか、性格全体を歪めてしまう
ことにもなりかねません。

問題の本質を突き詰めていくと案外と真犯人は別に
いるかも知れませんしね。
まさに推理ドラマの王道パターンみたいに。苦笑

さて、神経質症にもそんな大どんでん返しはあるの
でしょうか? ちょっと推理してみてください。
そしてその答えは、別の場所で。(^.^)


そこで再び、神経質性格

はい、ここで、ちゅぅーもくぅ~(注目)!
・・・って、σ(^_^; は金八先生かいっ。(爆)

冒頭に書いた神経質性格を、もういちど思い出して
みましょう。

え? 思い出したくもない? 
ふはは^^;  いいえ、思い出してください。(笑)


神経質は、物事に細かく敏感で、頑固で融通が無く、
とても執拗でしたね。

はい、これを裏返すと繊細で、真面目で几帳面、
そして粘り強いになります。

そして強い完全欲は、何事も貫く強さにも。

どうです? これなら、満更でもないでしょ。(^.^)
思いっきり 自慢しちゃいましょう。


余談ですが、
僕は二十歳まで自分の神経質が嫌いでした。しかし
段々と仕事上でのメリットに気付き始めたのです。
「この性格、結構使える」と。

その一番は、人の嫌がる仕事も苦にならないし、大変
な思いはしても、仕事を嫌いにならない自分を発見し
たのです。

勿論、対人関係では苦心しました。
見えなくてもよい人の『あら』が見えてしまって、
勝手にイライラしたり落ち込んだり・・・。

いちど認めてもらうと、可愛がってもらえるのです
が、真面目=正義感の塊ですから(笑)、なかなか
対人関係が安定しなくって・・・。

でも思ったのです。
「職場での目的は仕事である」と。

つまり、そこで仲良しこよしのお友だちになれなく
たって、仕事で良い関係が築ければそれで良しなの
だと。そうしたら、気分が楽になって、その時なり
の自分の力が発揮出来るようになったのです。


神経質は、いささか気難しい性格ですが、
本当は先ほど並べた依存的で、疑い深く、卑屈に逃げ
ている自分自身が、嫌で嫌でたまらない訳です。

だから余計に葛藤も強くなり、なんとか抜け出そうと
するのですが、そこがまたバカがつくほど真面目性格
でもありますから(笑)、「失敗したらマズイ」の不安
に阻まれて、なかなか葛藤の八方塞り・悪循環から
抜け出すことが出来ずにいることが多いです。

しかも欲求水準が異常に高い神経質ですから、
そんな自分が、ますます許せない。

しかし、それが短所であり、長所でもあるのです。

何事にも二面性の両面価値があります。
ならば悪い面と「オマエなんて嫌いだ」と苦虫潰した
顔でにらめっこしているよりも、良い面を見つけて
それを活かしながらニコニコと暮らしたいですよね。

もちろん、それでも悪い面が勝手に暴走してしまう
ことだってありますが、そんな自分を呆れて嫌いと
思わず「まあ、そういうこともあるわさ」と、
ほほえめたら、きっと、その心のゆとりが、自分を
良い方向に盛り上げてくれるはずです。

要するに、卑屈になるな、前を向け、です。
自分をムリに好きになる必要はないけれど、
少なくとも嫌いにならなければ、自分はそんな自分の
気持ちに応えてくれるはず・・いや、ちゃんと
応えてくれます。(^.^)


そして、提案

そこで、提案です。

出来てしまった悪循環は、どこかで断ち切らないと
いけませんよね。

なのでここは・・・

失敗してもいいじゃないですか。

不安は、あって当たり前なんです。
恐れず前へ進みましょう。

人間は、失敗から学び、成長する生き物です。

ひとまえで、失敗しようが、醜態を晒そうが、
それであなたの人生が終わるわけではありません。

むしろ、失敗や挫折があってこそ、本当の強い 
あなたに なれるのです。

ここらで、勇気を出してみませんか。


完璧になってから・・・、不安がなくなってから・・・
残念ながら、そんな日は百年待っても訪れません。

悪循環は、勇気を出して、あなた自身が断ち切るしか
ないのです。


最後に、エール♪O(^-^)oo(^-^)o

前の項目でも書きましたが、神経質は、
繊細で、真面目で几帳面、そして粘り強い
などの、とても素晴らしい性質を持っています。

いまはそれが悪い面に出ていますが、悪循環さえ
断ち切れば、人間的に素晴らしい成長(気付き)に
結びついて行きます。

勿論、断ち切ったからと云って、いつも良い面ばかり
ではありません。

その先も、神経質ならではの辛さもあるでしょう。
(両刃の剣ですからね^^)

しかし、神経質ならではの、素晴らしい気付きや、
出会いもたくさんあります。


そう、僕はいつも、
神経質な人や、神経質症の人たちに、
「あなたは、この世の中で『選ばれた人』なのですよ」
と、声を掛けています。

今の辛さは、
「選ばれた人に課せられた試練」なのだと。
これは決して、嘘や冗談ではないのです。(^-^)

例えば

真面目でなければ、ロクな仕事など出来ませんよね。

粘りがなければ、どんな仕事も完成しませんよね。

繊細でなければ、他人を気遣うことも出来ず、
信頼してもらえませんよね。

そう、この世で大成した人の多く・・・
いや、ほとんどは、皆、神経質でした。(断言)

神経質であり、悩み抜いた人だからこそ、
大きな仕事も果たせ、世に名を残せたのです。

まあ、、、
そこまでの大物になる必要もないですが^^; (笑)


でも、あなたの周囲を見てください。

あなたが信頼する人は、きっと気配りの出来る、
細やかな人のはずですよ。(^-^)
あなたも、そんな素敵な人を目指してみませんか。
きっと、成れますよ。

僕は、みなさんに、神経質の素晴らしさに気づいて
欲しいと思います。

そして
「神経質で良かった」
「神経質症になれて良かった」
と、心から思える日を願っています。

勇気を出してみよう・・と思ったとき、
そこからが、あなたにとっての、
本当のスタートラインです。(^.^)ガンバレ

 


・当記事は1998年に執筆者のプライベートサイト
に掲載したものです。
尚、時間経過により陳腐化した箇所のみ加筆、修正し
ました。また文章はスマートフォンで読みやすいよう
編集してある為、パソコン画面では読みづらい部分が
あるかもしれません。あらかじめご了承ください。


 
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