第五章コラム 大人子供からの脱却

mind-less本編でも、このコラムでも、
『大人になりきれない大人』の話をさせて頂き
ました。

どうしてそのような社会になってしまったのかは、
本編での歴史的背景などで書きましたが、大切な
ことなので、ここでも書いてみたいと思います。


さて、
『大人になりきれない人』の、一つの目安ですが、
「法律は破るためにある」と、うそぶいて憚らな
い(はばからない)人が、その典型かな、と思い
ます。

白状すれば私自身も、20代後半まで、そのよう
な振る舞いをしていました。

では、その法律のことが何故、そうしたことの
典型であり、象徴的なことであるのでしょうか。

それは「約束を守れない」、
強いては「決められたことを守れない」という、
「自分は社会の最低ルールさえ守れない人間だ」
と歪んだ認め方で、社会に(そのような)自分を
認めさせようとしているからです。

つまり、よい年齢をした人が、子供のように
(社会に)甘えている訳です。


精神科医である土居健郎氏が、30年以上前に
執筆された『甘えの構造』という本の中で、
『日本人の甘え文化が、その人自身や、社会を
蝕んでいる』
と主張されていた通りのことが今の世の中で
起こっています。

つまり、そうした甘えの連鎖が、いま社会の中で、
無法・無秩序な姿として現われているわけです。


当たり前の話ですが、
人間は生まれた時すでに、ルールやモラルを
身につけている訳ではありません。

親たちの愛情を受けながら、親の躾けや、生き方
をモデルにしながら、守るべき約束(ルール)や、
道徳(モラル)などを身に付けていきます。

「してはいけない」と云われたから「守る」、
「しない」というのは、本当に身に付いたもの
ではなく、ただ単にインプットされた行動の反射
に過ぎません。

やはりそうしたものは、自分が相手を裏切ったり、
相手から裏切られたりの(傷つきや、後味の悪さ
の)感情面から覚えて行きます。

しかしそうしたとき、親や周囲の大人の理解
(愛情・肯定)が得られないと、傷ついた自分や、
裏切ってしまった自分を、彼ら(子供たち自身)は
どう処理してよいのか分からずに迷ってしまうの
です。

つまり、そうした学習をしている途中の子供たち
が、道を外した行動をしても、ある意味それは
仕方のないことで、それを容認し、大きな過ちに
ならぬよう導いてあげる社会が望ましいのですが、

その導く役割を果たすべき人たちが、いまは
不在な世の中なのです。

要するに、社会(人間)全体が、甘えた子供集団
になってしまったのですね。


話が、とてつもなく脱線してしまいました。


甘えというのは、依存です。
少なくとも「してもらうだけ」の一方通行的な
依存関係は、子供時代だけに許されたことで、
大人社会では通用ないはずなのです。

しかし、いまは、それがまかり通る世の中に
なってしまった・・・
本当は、誰かが皺寄せを食わされ泣いている
のですけどね。

そして子供たちにも、そうした態度が
「当然のもの」として受け継がれてしまう。

だから、社会全体が無法・無秩序・・・と、
ますます乱れたものになってしまうわけです。


これは極端な例えですが・・
もし「『法』が間違っていて、
「(だから)どうしても守る気になれない」
と云うのであれば、裁判でも起こし闘うべきなの
です。

そして仮に敗訴して、それでもどうしても納得が
できないと云うのなら、
「こんな国に住めるか」
と、自分の主張を認めてくれる国に移り住めば
良いのです。

それが、大人の取る行動だと思います。

それをもし、
「気にいらないけど、仕方ないから住んでやる」
と云って、その腹いせのように、ただ自分勝手に
行動しているとすれば、何ら努力もせずに、
自分の主張だけを通そうとする態度であり、
まさに、子供じみていますよね。


これを書いている私自身、どこまで自分が大人
であるのか、自信がありません。

なので、一連の記事も含めて、これは、自分に
対する戒めでもあります。私が過去に神経症に
なったのも、この依存(甘え)が強かったから
と云えます。

つまり先ほどあった、
『甘えは自分自身を蝕む』ですね。

本当に自立した『大人になる』と云うことは、
依存する自分を認め、改めていく態度
ではないでしょうか。

とても勇気と努力のいることですが、
大人になるということは、そういうことです。

大切なのは「どうすることがベストなのか」
を考え、そうした態度を取り続けることが、
「大人になった」という証しのように思います。


 2002.4.30

 

 

・当記事は2002年に掲載したものを加筆修正し
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