その回復への提案(6) 無菌室からの脱却

六つめは、
もっと子供たちに冒険(経験)を積ませてあげて
欲しいということです。

人間は、良いことも悪いことも、
すべて経験から学ぶ動物です。

子供が好奇心旺盛なのも、
ただの「知りたがり」という意味ではなく、
いろいろなことを学ぶ為なのです。


それをある時期から大人たちは闇雲に
「危険だから、やめなさい」
「そんなことしても無駄だから、やめなさい」
と、云うようになりました。

云われた子供は、それが何故、どの様に危険なの
か分からずに、でも、親たちが「やめなさい」
と云うのだから「やめておいた方が良いのかな」
と、手を引っ込めてしまいます。


このときの弊害は2つあります。

その一つは、子供が独自に育むべき価値観を
親の価値観が邪魔をしてしまう。
つまり親が価値観を押し付けてしまう支配。

そしてもう一つが、
経験によって得られるはずの知識や、
生きていくうえで大切な危険認知、あるいは
情緒などを育むことの阻害。



たしかに子供は感受性が豊かで、しかも経験に
よって多くのことを吸収しますから、
ときには強い不安や、情緒の不安定さを示す
ことがあり、親としては心配かも知れません。

しかしそれは、初めての体験が多く、
「ビックリしている」という感じですから、
それも大事な人生勉強と受け止めて、
抱きしめてあげるなどのケアをしてあげれば
大抵のことは大丈夫なはずです。

逆にある程度、そうした経験を積まないと、
いつまでも「ワケが分からず」という
不安定な状態になることが、むしろ心配です。

価値観にしても、
「そんなことをしても無駄」とか「損」とかは、
本人が経験から感じれば良いことですから、
ある意味「大きなお世話」なのだと思います。


そして、危険に対する認識についても、
これは自分で体験して覚えるしかなく、
親としてはとても心配ですが、
「ワケが分からず」の状態のままは、
それ以上にリスキーです。

なぜなら、
人間、どこでどんな危険に遭遇するか分からない
のですから「何が危険か」くらいは、少しずつ
体感しておく必要があるのです。

もちろん、生命に関わりそうなこと、
大怪我しそうなことは、制止する必要は
ありますが・・・

でも一生、無菌室や安全な場所に閉じ込めて
おくわけには、いきませんからね。

もっとも絶対安全な場所ってどこ?
という感じもしますが・・


ともあれ、私たちの人生自体、ゲームで云えば
ロールプレイの世界で、そこで積んだ経験値が
成長みたいなものですから、むしろ、
『転ばぬ先の杖』は邪魔なんですよね。

親にしてみれば、自分が不安で安心したいから
転ばぬ先に杖を出してしまうわけで、
「それは単なる自分のエゴなんだ」
ということ。そして、ハラハラしながらも、
「見守ってあげることが親の役割」
と、この2つを肝に銘じるしかありませんね。

親って・・・子供を育てるって、ほんと大変な
ことだと思います。


※もしかすると、世代によっては、「なにが危険
なのか」「どこまでが大丈夫なのか」ということ
を自分自身、知らない親御さんも居るかもですね。
そうなると、すぐに子供の行動にストップをかけ
てしまうのも道理、無理もないかも知れません。

であるなら、むしろ学ぶチャンスかも、ですよね。
知らないことは恥ずかしいことではありません。
経験豊かな人が近くにいたら、訊いてみてはどう
でしょう。あるいは「危険って何だろう」と改め
て考えてみるのも良いと思います。ただ怖がって
いるだけでは、なにも学べませんからね。


そして、これは余談・・・
ちょっと極端で物騒な例ですが、むかし妻が鍼灸
の学生時代、「人を死なす方法も知っておくべき」
と、そうした危険なツボも教えられたそうです。

その話を聞いたとき、
「おお、池波正太郎さんの藤枝梅安の世界だ」
と感動したものですが、そんなことは、ともかく

それはどういう意味だと思いますか?
わざわざ死なせるツボなど・・

しかし、それは
『人がどの様にしたら死ぬのか』
を知ることは、
『人を、いかにしたら生かせられるか』
を知ることに通じるからです。

毒も薬になるし、逆も真なりで
薬も毒になることがあります。

それは学んでみて初めて知ることが出来る
こと、ですよね。子供の経験も、同じです。

物騒な余談ついで?に、
私も昔よく、昆虫を捕まえました。捕まえて
手足や羽根をちぎったりして遊んでいました。

いま思えば、とても残酷なことですが、私たちは
昆虫たちを殺生するという体験から、
「生き物は、こうすると死んでしまう」と学び、
殺してしまった後味の悪さから
「殺生はいけないことである」と云うことを、
さらに学んだような気がします。

もちろん殺傷は、仮に虫でも良くないこと、
なのですが、、、

子供たちが残酷なことを平気で出来るのは、
まだ本来の生、命の大切さ、道理を知らないから、
残酷なことも出来るのです。

問題なのは、それがある程度の年齢に達してい
ても、まだ知らないでいることです。
事実、多くの事件・事故に繋がっているように
思います。

極論ですが
「おまわりさんに捕まるからやめなさい」
と無闇にとめて、どうして悪いのかの『本質』
を知らずに育ってしまうことが、物事の
凶悪化に繋がっている、と考えられるわけです。

※もちろん、経験以外にも、そうした凶悪事件
の背景には、さまざまな要因があると思います。


以上のことからも、
私たち大人が子供の体験チャンスを過剰になって
制止していないか、チェックしてみる必要が
ありそうですよね。

子供の成長の芽を摘んでしまわぬ為にも。

 

 

・当記事は2002年に掲載したものを加筆修正し
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